福島や茨城の農産物の安全性にいまだ問題なし。

[2011年3月21日月曜日]

今回の東北関東大震災で亡くなられた方々に哀悼の意を表するとともに、
被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

昨日さかんに報道されておりましたのが、福島原発事故にともなう食品の放射能汚染の問題でした:
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110319-00000568-san-pol
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110320-00000627-yom-soci

枝野官房長官の声明で、福島県産の牛乳と茨城県産のホウレンソウから、食品衛生法上の暫定基準値を超える放射線量が検出されたが、「健康に影響を及ぼす数値ではなく、冷静な対応をお願いしたい」と述べられました。

今回検出された放射性物質濃度の牛乳を、仮に日本人の平均摂取量で1年間摂取し続けた場合の被曝線量は、CTスキャン1回程度のものである。ホウレンソウについても、やはり日本人の年平均摂取量で1年間接種したとして、CTスキャンと1回分の、さらに5分の1程度である、という。

内閣府食品安全委員会のホームページにわかりやすいQ&Aがあるので、ご参照ください:
http://www.fsc.go.jp/sonota/emerg/emerg_genshiro_20110316.pdf

ただ、今回厚生労働省が食品の安全性に関して決定した食品衛生法の暫定規制値(放射性ヨウ素とセシウム)は値が低すぎるような印象があります。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001558e.html

一般消費者はそれでもなくとも、現在放射能に関して過敏な状況にありますので、
食品衛生法の基準値を超えたので出荷停止と言われると、
福島県産の乳製品全般や茨城県産の野菜全般への風評被害が非常に心配されます。
すでに栃木、群馬、千葉でも同様の放射能汚染が報道され始めましたが、
このままでは明らかに安全な食品が福島原発事故の煽りを受けて、風評被害にあいそうです。

このような状況において最も大切なのは、
政府やメディアのリスクコミュニケーションが適切かどうかということではないかと考えます。

この「食品衛生法上の暫定規制値」というのは、どういった根拠をもとに設定された基準値なのか、
それをわかりやすく説明する必要があるのではないでしょうか?
しかも「暫定」という限りは、変更される可能性があるということでは?

今回厚生労働省が決定した「食品衛生法上の暫定規制値」は
内閣府原子力安全委員会が報告した「原子力施設の防災対策について」
という指針の中にある基準値とのことですが、その根拠はわかりません:
http://www.nsc.go.jp/shinsashishin/pdf/history/59-15.pdf

少なくともこのままでは、明らかに健康影響のない食物までが、
市場に出ていかないばかりでなく、出荷停止になった地域の農産物全体が
風評被害をこうむることになるでしょう。
枝野官房長官がいくら「冷静な対応を」と叫ばれても、
乳幼児をかかえる母親たちにとっては、全く聞く耳をもってもらえないように思います。

私は、このような消費者を「フード・インフォマフィラキシー(食品情報過敏症)」と呼んでいますが、
実はこの問題はむしろ情報を発信する側にあるケースが多く、
リスクコミュニケーションの手法が改善されることで治る可能性があると考えています。

今回の食品の放射能汚染の問題についても、
行政がリスク評価+リスクコミュニケーションをどう管理していくかによって
風評被害を最小限におさえることができるのではないでしょうか?

まずは、内閣府の食品安全委員会でリスク評価をされることで、
厚生労働省もこの「暫定規制値」を上方修正することができるのであれば、
一刻も早く食品安全委員会でのリスク評価をお願いしたいと思います。

非常事態の日本で本当にいま考えないといけない人体への健康影響は
放射能汚染の食品を流通規制することではなく、
むしろ早く食品の流通を平常な状態に復帰させることだと思います。

法律や規制がそのまま適用できるのは、通常の社会環境にあるときの話であり、
原発がいまのような状況は明らかに社会全体が非常事態です。
行政には非常事態仕様の規制を検討していただきたいと思います。

本当に大切な国民の生命と健康と食について、
最善の策を検討すべきと考えます。

K