食の安全と安心フォーラムXII『食のリスクの真実を議論する』(2016.2.14.)より
食品添加物 -そのリスクと消費者の誤解- (2016年8月24日)

長村 洋一 鈴鹿医療科学大学教授・食品安全協会理事長
長村 洋一

食物アレルギー

 我々が日々消費している大量な食品を、見栄え良く、美味しく、食べやすくそして何よりも安全に流通させるためには食品添加物は不可欠な化学物質である。法律的には「食品添加物とは、食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によっ て使用する物」と定義され、指定添加物(449品目)、既存添加物(365品目)天然香料(612品目)一般飲食物添加物(すべての食品が成り得 る)が世の中に流通している。
 この添加物の多くは純粋な化学物質であるため、化学実験で用いる試薬的イメージが非常に強いことと、昭和30年代から50年代頃にかけて多くの 食品添加物が、安全性の問題から削除されていったことなどが相まって「無添加が最も安全である」との強い意識を有する消費者が多い。
 実際に世の中には、「無添加だから安全」や「化学調味料不使用、だから美味しい、○○○○」などと言ったコマーシャルを非常に多く見ることがで きる。しかし、平成7年に行われた食品添加物の大幅な法的改正と、その後の行政指導から判断する限り食品添加物は、適正に使用されれば、健康障害 が発生することは無いと考えて良い。
 その根拠であるが、まず日本の添加物はポジティブリスト制度であるので、勝手に自分の作りだした化学物質を入れることは全くできない。ただし、既存添加物は平成7年の時点で使用実績があると登録された天然添加物から構成されている。そして、指定添加物として許可されている添加物は、安全 性確保のため無毒性量が動物実験で求められ、その試験結果に基づいて使用量が決定される。その決定方法は科学的証拠を持って人類が考え得る健康障 害が発生しない量である。
 図に示すように医薬品は有効性とその危険性が共存している領域があるが、それは病気を治癒させるためという大きな目的のためにやむを得ないこと である。しかし、食品添加物については前述のように無毒性量の領域で使用用量が決定されているから、明らかに危険性がないと判断できる。さらに安 全性を確かなものとするために国は、添加物に対して企画、基準を制定している。従って、適正に使用される添加物は何の健康障害も発生させない。
 ただ、図からも明らかなように安全な食品添加物でも大量に使用したとすれば、当然危険性が発生する。これが「添加物を危険」と言って脅すことを やっている方々の手口として良く使用される。例えば、通常の使用量では何の障害も発生しないような量の「保存料」で「成長障害が起こる可能性がある」と脅したり、うま味調味料では「中華料理店症候群が発症する可能性がある」と脅したりする。
 以上のように安全な食品添加物でも多くの消費者には「入っていれば怖い!」という量の概念の欠如に基づく誤解がある。この誤解は多分に感覚的な 要素を多く含むだけに、理論で納得させられない部分があることがリスクコミュニケーションにおける大きな難点になっている。