食のリスクコミュニケーション・フォーラム2020
第3回:『 低線量放射線被ばくのリスコミ~福島復興支援のために~ 』(9/26)開催速報

食のリスクコミュニケーション・フォーラム2020
『消費者市民のリスクリテラシー向上を目指したリスコミとは』
第3回テーマ:『低線量放射線被ばくのリスコミ~福島復興支援のために~』(9/26)開催速報

【開催日程】2020年9月26日(土)13:00~17:50
【開催場所】オンライン会議(Google Meet)
【主  催】NPO法人食の安全と安心を科学する会(SFSS)
【後  援】消費者庁、東京大学大学院農学生命科学研究科附属食の安全研究センター
【協  賛】日本生活協同組合連合会、一般社団法人食品品質プロフェッショナルズ、東京サラヤ株式会社
【参加費】3,000円/回
     *SFSS会員、後援団体(先着1~2名程度)、メディア関係者(取材の場合)は参加費無料

3人の専門家より、それぞれのテーマに沿ったご講演をいただいた後、パネルディスカッションでは参加者からのご質問に対して活発な意見交換がなされました。

【プログラム】

13:00~14:00 『住民の放射線不安は過剰なのか:安全と安心の関係を見直そう』
        伊藤 浩志(学術博士)
14:00~15:00 『原発問題への関心が低下した今、メディアが果たすべき役割は』
        瀬谷 健介(BuzzFeed Japan)
15:00~15:20 休憩
15:20~16:20 『放射線リスコミはなぜ失敗したのか』
        多田順一郎(放射線安全フォーラム)
16:20~17:50 パネルディスカッション
        『低線量放射線被ばくのリスコミ~福島復興支援のために~』
        進行:山崎 毅(SFSS)、パネラー:各講師

risk2020_03_1.jpg

伊藤浩志先生


risk2020_03_2b.jpg

瀬谷健介先生


risk2020_03_3b.jpg

多田順一郎先生


risk2020_03_4.jpg

*講演要旨ならびに講演レジュメは以下のとおりです:

①伊藤 浩志(学術博士)
『住民の放射線不安は過剰なのか:安全と安心の関係を見直そう』

「安全は科学の問題で、安心は心の問題。科学知識を身につければ、過剰な不安は解消できる」と考えられてきた。リスク認知研究により、素人のリスク認知はバイアスを避けられず、科学的なリスクの見積りより、過剰になりがちなことが示されているからだ。ところが、脳科学などの進展で、文化や生物種を超えて常に観察される一定の偏りには、環境に適応し、種の保存に必要な合理性があることが分かってきた。
「過剰な不安」と見られてきた素人のリスク認知の背後にある生物学的合理性を検証し、安全・安心二元論の限界を明らかにする。新型コロナウイルス感染症にも関わる普遍的な問題である。その上で、新たなリスク論を提案したい。

伊藤先生講演レジュメ/PDF:998KB

②瀬谷 健介(BuzzFeed Japan)
『原発問題への関心が低下した今、メディアが果たすべき役割は』

福島第一原発で、高濃度の放射性物質を含んだ「汚染水」に、浄化処理を施した「処理水」が日々生まれ続け、タンク群が敷地の一部を埋め尽くすように拡がっています。東電は、敷地の問題から2022年夏が保管のタイムリミットだとしています。経済産業省の有識者会議が2月、「海か大気への放出が現実的」とする報告書をまとめました。ですが、政府は最終的にどうするか判断を示せていません。地元でも賛成の声がある一方、風評被害を懸念して反対し、保管継続を求める動きがあるからです。報道機関の 1 人の記者として、原発構内や関係者、元環境大臣などへの取材を通し、何を知り、何を考えたかを報告します。

瀬谷先生講演レジュメ/PDF:0.99MB

③多田順一郎(放射線安全フォーラム)
『放射線リスコミはなぜ失敗したのか』

言い古されたことですが、安全を理解させることはできても、安心してはもらえません。行政は、すでに安全だった食品基準をさらに引き下げて安心を提供しようとし、案の定失敗しました。
食品の放射能汚染に関する人々の認識を混乱させた最大の要因は、科学的な判断ではなく、ポピュリズムへの妥協に基づいて基準を作ってしまったことにあります。ただしその背景には、1950年代に作られた放射線防護の基本的な考え方を、無批判に墨守してきた学界の姿勢がありました。とくに、放射線防護体系が用いてきた「どれほど僅かな放射線曝露にも健康リスクがある」という慎重な前提は、さまざまな誤解の根源となっています。

多田先生講演レジュメ/PDF:65KB

*なお、参加者アンケートの集計結果は後日掲載します。

(文責・写真撮影:miruhana)