第2号 2011.6/15

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     NPO食の安全と安心を科学する会 2011.6.15  第2号
          http://www.foodsafetysecurity.blogspot.com/
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謹んで地震災害のお見舞いを申し上げます
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今回の東北関東大震災で亡くなられた方々に哀悼の意を表するとともに、
被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
われわれNPOでも今般の大震災・福島原発事故に関わる食の安全と安心
の問題について議論を重ね、ホームページによる広報活動に努めております。
http://www.foodsafetysecurity.blogspot.com/
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6月といえば梅雨の季節ですが、春の終わりであるとともに夏の始まりを感じる
季節ですね。梅雨はそれほど雨足の強くない雨や曇天が長期にわたって続く点に
特徴があり、カビや食中毒などに注意が必要な季節とされています。
今年も焼き肉チェーンで発生した腸管出血性大腸菌O-111による食中毒の
ニュースは記憶に新しいところです。我々も正しい知識を持つことで食中毒を
防ぐことが大切です。

さて、おかげさまでNPO「食の安全と安心を科学する会」の創刊第2号のメール
マガジンを発信する運びとなりました。今回も、6/26に開催されるシンポジウム
「食の安全と安心フォーラム」の紹介や、カビ毒、HACCAPに関する最新の情報を
用意致しましたので、どうぞ御拝読ください。

NPO「食の安全と安心を科学する会」の活動状況をはじめ、皆様に御役に立つ、
有益な情報をタイムリーに発信していきたいと思っております。
何とぞよろしくお願いいたします。

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【本日の内容】
◇シンポジウム案内 
 食の安全と安心フォーラム シリーズ第3回
  テーマ:昨今の食品問題から考える食の安全と安心の未来について
◇国産玄米から初のアフラトキシン検出とその周辺情報 
 国立医薬品食品衛生研究所協力研究員・日本マイコトキシン学会副会長
                           高橋治男
◇HACCAPと小売業HACCAPについて 
 HACCAP指導者・イラストレーター 源 竜弥
◇NPO「食の安全と安心を科学する会」活動報告および今後の予定

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□■ シンポジウム案内  □■

☆当NPO主催、シンポジウムを開催します!

来る6月26日(日)、NPO食の安全と安心を科学する会主催
『食の安全と安心フォーラムシリーズ第3回』を
東京大学大学院農学生命科学研究科キャンパス(文京区弥生1-1-1)
フードサイエンス棟内・中島董一郎記念ホールにて開催致します。

今回は食中毒、口蹄疫、鶏インフル、リスクコミュニケーションなど、
昨今の食の安全と安心の問題を議論します。
現在国内外を問わず非常に注目度の高いこれらのテーマに対し、
当NPOが厳選した講師陣を迎え、皆様の疑問にしっかりお答えできるような
シンポジウムになることと確信しております。
この機会をお見逃しなく、是非ご参加くださいますようお願い申し上げます。

■食の安全と安心フォーラム シリーズ第3回
 テーマ:昨今の食品問題から考える食の安全と安心の未来について

期日:2011年6月26日(日)13:00~17:30
場所:東京大学大学院農学生命科学研究科キャンパス(文京区弥生1-1-1)
   フードサイエンス棟内・中島董一郎記念ホール
主催:NPO食の安全と安心を科学する会 (SFSS)
後援:東京大学大学院農学生命科学研究科附属食の安全研究センター

参加登録:事前メール登録制 ⇒ nposfss@gmail.com(参加申込み先メールアドレス)
件名に「6/26参加希望」、本文に参加者の氏名、所属機関(複数可)をご明記下さい。
参加費:お一人様3千円(当日受付にてお支払いください)
広告・寄付:当NPO活動にご賛同くださる個人様・法人様より
1口5万円から受付けております。
お問合せ先:SFSS関西事務局 担当:十和(そわ)TEL:06-6362-0171

プログラム:
進行:芦内 裕実(NPO食の安全と安心を科学する会 理事)
13:00-13:10 オーバービュー
局 博一(東京大学大学院農学生命科学研究科食の安全研究センター 教授)

【細菌感染による食中毒】
座長:局 博一(東京大学大学院農学生命科学研究科食の安全研究センター 教授)
13:10-13:40「腸管出血性大腸菌O111による食中毒」
関崎 勉(東京大学大学院農学生命科学研究科食の安全研究センター センター長・教授)

【畜産業への打撃と今後の対策】
座長:倉恒 弘彦(大阪市立大学医学部客員教授)
13:40-14:10「わが国の口蹄疫問題」
杉浦勝明(東京大学大学院農学生命科学研究科食の安全研究センター 特任教授)

14:10-14:40「止まない鶏インフルエンザ
眞鍋 昇(東京大学大学院農学生命科学研究科付属牧場、食の安全研究センター 教授)

14:40-15:00 休憩

【リスクコミュニケーション:食品企業の必須課題】
  座長:小川 正(京都大学 名誉教授)
15:00-15:30「家畜衛生をめぐる消費者の意識・知識と行動」
細野ひろみ(東京大学大学院農学生命科学研究科科学的コミュニケーション領域 准教授)

15:30-15:50「食品安全に関する消費者心理と行動」
古川雅一(立教大学 特任准教授)

15:50-16:10「食品の放射能汚染による健康影響のエビデンス」
山崎 毅 (NPO食の安全と安心を科学する会 理事長)

【パネルディスカッション】
16:15-17:15「食の安全と安心をおびやかす問題とその対策を徹底討論」
パネラー:関崎、杉浦、眞鍋、細野、古川、局、山崎
*参加者からのご質問にパネラーがお答えします!


□■ 国産玄米から初のアフラトキシン検出とその周辺情報 □■
   国立医薬品食品衛生研究所協力研究員・日本マイコトキシン学会副会長
                         高橋治男

  今年の 2月中旬に、九州にある某大学が栽培し、昨年11月に販売したコメ(玄米)
から基準値の7倍(70μg/kg)のアフラトキシンB1が検出されたことがマスコミに
報じられました。
 アフラトキシンは、コウジカビの仲間がつくるカビ毒の一つで、自然界には化学構造が
近似した4種(B1,B2,G1,G2)が、通常、存在します。特に、アフラトキシンB1は分布量が
比較的多く、また、発がん性が自然毒の中では最も強いうえ、高い急性毒性をも有する
ことから、わが国でも基準値(10μg/kg)が設定されており、輸入農産物に
ついては検査が実施されています。
 アフラトキシンをつくるカビ(アスペルギルス・フラバス Aspergillus flavus)は
地理的な分布があり、東南アジアなどの熱帯、亜熱帯に主として生息し、本邦では、
九州南部以南で認められ、実際には焼酎の文化圏と近似しています。したがって、
これまでコメのアフラトキシン汚染は、2008年に、輸入事故米が食用に
転売された事件があるだけで、国内産の汚染事例としては、これが初めての報告となります。
 コメ(玄米)は、国の買い上げ時に、水分量が15~16%に定められており、
この水分量での1年程度の通常保管であれば、有害カビの汚染は起こりえません。
このことから、汚染原因は明らかにされていませんが、収穫時の乾燥不良か、
あるいは貯蔵時の保管不良による吸湿にともなう水分上昇と考えられます。九州とは言え、
秋~冬期間の貯蔵でも、その条件によっては、熱帯、亜熱帯性のカビが増殖して
カビ毒汚染が起こりうることを実証した事例で、微生物の活動による危害を軽視しては
ならないとの警鐘と言えます。また、今回の汚染事例はアフラトキシン産生菌の生息圏内
と見なされますが、近年、問題になっている温暖化を考慮すると、危険区域は拡大している
可能性もあります。また、輸入飼料と共に運び込まれたアフラトキシン産生菌の国内における
消長は、よくわかっていませんが、宮崎県は畜産業が盛んですので、アフラトキシン産生菌で
汚染された輸入トウモロコシなどが配合された飼料が汚染源となった可能性も十分あります。

アフラトキシン産生菌の国内における分布調査は、1970年代の初めに調査されて以来、
その後、調査がされてきませんでした。最近(2009~2010年度)、農水省が、
全国的な調査を実施したとされています。その結果は、まだ、公表されていませんが、
その結果が待たれるところです。

 現在のわが国のアフラトキシンの規制は、先ほどふれました様にB1のみでしたが、
厚労省は、近年の国際的な動向にあわせ、今年の10月から、4種のアフラトキシンの総量
となる新しい規制の方向を打ち出しています(食安発0331第5号)。
具体的には、"総アフラトキシンの量が10μg/kgを超えて検出される食品は、
食品衛生法第6条第2号に違反する"としています。

以前の規制値が1971(昭和46)年の設定ですから40年ぶりの改定となり、
近年の国際的な食の安全に対する関心の高まりを反映していると言えます。

□■ HACCAPと小売業HACCAPについて □■
HACCAP指導者・イラストレーター 源 竜弥

HACCPとは「危害を分析して重要な管理点を見つける」という英語の頭文字をとったもので、
1960年代にアメリカで生まれた新しい衛生管理手法です。安全な宇宙食を製造するために
開発されました。まずは、一つの食品を作るまでのすべての工程を調べます。そして
各工程に潜む、微生物学的危害、物理的危害、化学危害の要因を予測、分析します。
ここさえ押さえて全てを監視すれば完成した食品の安全を担保できる管理ポイント(CCP)を
見つけて管理する。これがHACCAPの主な流れです。最終商品の抜き取り検査で安全を保障
していた当時では画期的な手法でした。有効性を確認したアメリカでは全業種にこの手法を
取り入れるよう義務化しましたが、商品の種類が多く、頻繁にメニューが変わるレストランや
給食、弁当総菜業のような小売業には導入が難しく、なかなか普及しませんでした。
そこで登場したのが「小売業HACCAP」です。無数にある商品3カテゴリーに分類して、
その3つのグループの作業工程ごとに重要管理点を決めて、ルール通りに作業を行う、
とてもシンプルなHACCAPです。日本でも、毎月、必ずどこかの飲食店や弁当総菜店等の
小売店で食中毒事故が発生しています。この画期的な「小売業HACCAP」を是非わが国でも
普及させて、食中毒事故を少しでも軽減出来ればと願っています。

画像については下記をご参照ください↓
http://nposfss-new.blogspot.com/2011/06/haccaphaccap.html

参考文献 FDA Managed Food Safety ; A Manual For the Voluntary Use of HACCAP
Principles for Operator of Food Service and Retail Establishments


□■ NPO「食の安全と安心を科学する会」活動報告および今後の予定  □■
【活動報告】
2010年
12/10(金) 東京大学大学院農学生命科学研究科フードサイエンス棟竣工記念
 関連サテライトシンポジウム

詳細はこちら↓
http://nposfss-new.blogspot.com/2010/12/blog-post.html

2011年
4/11(月) 小座談会『食の安全と安心フォーラム』 
シリーズ第1回 テーマ「飲食物の放射能汚染から考える食の安全と安心の
将来について」(於東大FS棟)
4/14(木) 同 シリーズ第2回(於SFSS関西事務所)

※今般の原発事故をうけて、緊急座談会『食の安全と安心フォーラム』を
4/11(東京)、4/14(大阪)で開催しました。
内容については、当NPOのホームページをご参照ください。
☆2011年5月2日 緊急座談会『食の安全と安心フォーラム第1回(4/11)』
 http://nposfss-new.blogspot.com/2011/05/1.html

また関係記事として、理事長雑感フ゛ロク゛もご参照ください。
☆2011年3月26日 飲食物の放射能汚染について(理事長雑感)
 http://nposfss-ty.blogspot.com/2011/03/blog-post_26.html


【活動予定】
6/26(日) 食の安全と安心フォーラム シリーズ第3回
 テーマ「昨今の食品問題から考える食の安全と安心の未来について」
  場所:東京大学大学院農学生命科学研究科フードサイエンス棟
  時間:13:00~17:00

9/1(木)、2(金) シンポジウム「食の機能性・安全性、そして安心を科学する」
(神戸大学食の安全・安心科学センター・東京大学食の安全研究センター共催)
   (於神戸市産業振興センター「ハーバーホール」)
    当NPOが後援、理事長の発表他、パネルディスカッション等に参加 する予定です。

  場所:神戸市産業振興センター(JR神戸駅徒歩5分)
  ※フォーラム参加費無料 

☆詳細は下記の両センターURLをご参照ください。
  神戸大学食の安全・安心科学センターホームページ
   http://www.research.kobe-u.ac.jp/ans-foodss/history/forum11.html
  東京大学食の安全研究センターホームページ
   http://www.frc.a.u-tokyo.ac.jp/event/110901.html


12月(日程未定) 小座談会『食の安全と安心フォーラム』
   シリーズ第4回を開催(当NPO主催)(於東大FS棟) テーマ:未定 

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【賛助会員】
 ・株式会社OSGコーポレーション
 ・メロディアン株式会社
 ・株式会社シドミ
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【編集後記】
NPO食の安全と安心を科学する会のメールマガジン創刊第2号いかがでしたでしょうか?
ご意見・ご感想などございましたら、下記メールアドレスにお願い致します。
大地震の影響により、楽しみにしていた地元のお祭り、夏の風物詩である花火大会が
中止となりました。祭りや花火は鎮魂や弔いの意味もあるとのこと、
毎年行われる行事は楽しみにしていただけに非常に残念です。
警備の問題やエネルギーの過剰消費の問題があるとのことですが、
祭りや花火は人々の心を癒す行事であることは間違いありません。
なんとかこのマイナスの流れをプラスに持っていきたいものです。

守山 治
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