食の安全と安心フォーラムⅤ

一般公開シンポジウム
テーマ:食育:食の安全性と機能性を正しく理解するために
日時:2012年7月28日(土)
場所:農学部フードサイエンス棟中島董一郎記念ホール
主催:NPO食の安全と安心を科学する会(SFSS)
後援:東京大学食の安全研究センター


NPO食の安全と安心を科学する会 理事長 山崎 毅

2012年7月28日(土)、東京大学農学部フードサイエンス棟中島董一郎記念ホールにて標題のシンポジウムが開催されました(主催:NPO食の安全と安心を科学する会、後援:東京大学食の安全研究センター)。今回で5回目をむかえた本フォーラムでは、食に関する各分野の専門家を招き、食育、そして食の安全性と機能性についてご講演をいただきました。


20120728_026.jpg午後一番の基調講演では、服部学園理事長、服部栄養専門学校校長の服部幸應先生より「食育の現在・過去・未来」とするご講演をいただきました。「いまの日本は、親のしつけに問題があり、その結果食も含めて子供たちのライフスタイル自体が崩壊してしまって、国家として危ない」といように、服部先生らしい独特の口調で食育の必要性を説かれました。
また、東京大学食の安全研究センター長で教授の関崎勉先生からは、「生食について考える。食中毒対策への提言」と題して、いま最も話題になっている7月からの「牛レバ刺し全面禁止」も含めたO157、カンピロバクター、サルモネラなどの細菌による食中毒の実態ととるべき対策について、規制を無理に厳しくすることよりも、消費者が「informed choice」により自己判断できるような学術啓発活動のほうが大事である、というご講演がありました。その他、食の微生物汚染については、「食品の汚染カビをめぐる危害と安心・安全」と題して、 国立医薬品食品衛生研究所客員研究員の高橋治男先生よりわかりやく解説していただきました。
後半では、食の機能性について神戸大学食の安全・安心科学センター長で教授の大澤朗先生から「食品の機能性評価の新展開」と題して、茶カテキンの吸収を改善させる乳酸菌の役割について、また関西福祉科学大学教授、東京大学食の安全研究センター特任教授の倉恒弘彦先生から「疲労・抑うつと食との関連、抗疲労トクホに向けて」と題して、大変興味深いご講演をいただきました。機能性食品に関しても、より明確なエビデンスが要求される時代になってきたと実感する内容でした。
午前中のセッションでは、食の安全に関する消費者の意識と購買行動について、東京大学の細野ひろみ先生と古川雅一先生からご講演をいただくとともに、山崎より「食の安全を安心に変える学術啓発活動とは?」と題して、リスクコミュニケーションのポイントをお話ししました。
モノ造りをしている方々は、昨年の原発事故以来、大きなフラストレーションを感じておられたはずです。それは、科学的に安全なはずの食品に対して安心できない消費者がたくさん現れたということではないでしょうか?山崎はこういった消費者を「フードインフォマフィラキシー(食品情報過敏症)」と呼んで、リスク情報の認知バイアスであることを消費者に自覚してもらえるよう、学術啓発活動を展開しています。
市場の食の放射能汚染は、発がんリスクを生物学的に評価したときに検出限界以下であり、まったく気にするようなレベルではないのですが、放射性物質の検査がされてないものは食べない、とか、福島の農産物は食べない、というような消費者がまだまだいる限りは、生産者、民間企業、行政機関、マスメディア、市民団体が一致団結して、この「フードインフォマフィラキシー」を駆逐しなければなりません。しかし残念ながら、現状では消費者のリスクに関する勘違いを指摘するどころか、むしろ消費者の「ガラスの安心」のために厳しい基準をもうけたり、全品検査をアピールすることで、あたかも安全な商品を市民に提供していますと主張するのは、明らかに風評被害を助長し、逆効果です。
消費者から信頼されるリスク情報発信のポイントは、①魅力的であること、②受け手と類似性が高いこと、③信憑性(中立的な信念と専門性)が高いこと、の3つであり、より消費者と近づき、食の安全についても専門性をもって、科学的な事実を真摯に伝える姿勢が大事と説きました。
今回のフォーラムの各講演内容に関しては、本季刊誌にていくつかご紹介していきます。

なお、当日のプログラムは以下のとおりでした:

食の安全と安心フォーラムV
「食育:食の安全性と機能性を正しく理解するために」

日時: 2012年7月28日(土)10:00~17:00
場所: 東京大学農学部フードサイエンス棟中島董一郎記念ホール
主催: NPO食の安全と安心を科学する会(SFSS)
後援: 東京大学食の安全研究センター

10:00 食の安全を安心に変える学術啓発活動とは?
     NPO食の安全と安心を科学する会 理事長 山崎 毅

10:30 食のリスクに対する消費者意識
     東京大学大学院農学生命科学研究科 准教授 細野ひろみ

11:00 食品ラベル情報が消費者行動に与える影響
     東京大学食の安全研究センター 特任准教授 古川 雅一

11:30 食品の汚染カビをめぐる危害と安心・安全
     国立医薬品食品衛生研究所 客員研究員 高橋治男

12:00 ランチ(フードサイエンスカフェのヘルシー弁当)

13:00  食育の現在・過去・未来
      服部学園理事長、服部栄養専門学校校長 服部幸應


14:15 生食について考える。食中毒対策への提言
      東京大学食の安全研究センター長・教授 関崎 勉

14:55 コーヒーブレイク

15:10 最近の食物アレルギーの実態と対策、および花粉症との交差問題について
      京都大学 名誉教授 小川 正

15:40 食品の機能性評価の新展開
      神戸大学食の安全・安心科学センター・教授  大澤 朗

16:20 疲労・抑うつと食との関連、抗疲労トクホに向けて
      関西福祉科学大学教授、東京大学食の安全研究センター特任教授 倉恒 弘彦

17:00 閉会

本フォーラムの抄録集は1部1000円で販売しております。
ご入用の方は当NPO関西事務局までお問い合わせください:

  NPO食の安全と安心を科学する会 関西事務局
  大阪市中央区北浜1-1-9 第一住建北浜ビル3F
  TEL:06-6227-8550、FAX:06-6227-8540
  メール:sfss.kansai@gmail.com

 

以 上