食のリスクコミュニケーション・フォーラム2015 (4回シリーズ) 活動報告

2015年4月から10月にかけて標題のミニフォーラムを4回シリーズで開催いたしました。
毎回30~40名のご参加があり(定員40名)、リスコミ/食の安全・安心に関してのご講演とパネルディスカッションを実施し、参加者からのご質問にパネラーがお答えするとともに、非常に有意義な意見交換ができました。

■食のリスクコミュニケーション・フォーラム2015
 テーマ:『食の安全・安心の最適化にリスコミは有効か?』

【開催日時】
  第1回 2015年4月26日(日)13:00~17:40
  第2回 2015年6月28日(日)13:00~17:40
  第3回 2015年8月30日(日)13:00~17:40
  第4回 2015年10月25日(日)13:00~17:40

【開催場所】 東京大学農学部フードサイエンス棟 中島董一郎記念ホール
【主催】 NPO法人食の安全と安心を科学する会(SFSS)
【共催・協賛】 一般財団法人社会文化研究センター
【後援】 消費者庁、東京大学大学院農学生命科学研究科食の安全研究センター
【参加費】 3,000円/回



【当日の写真、講演要旨、&アンケート集計結果】

<第1回 2015年4月26日(日)>

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吉井 正武 氏


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高橋 梯二 先生


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藤岡 典夫 先生


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広田 鉄磨 先生


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パネル・ディスカッション


① 『グローバル化における日本の食品安全』
  高橋 梯二(東京大学農学生命科学研究科非常勤講師)

  <高橋先生レジュメPDF/577KB

2000年以降世界各国では、食品安全措置が強化・充実され、また、グローバル化が進んでいるが、日本はこのようなグローバル化にどのように対応しているかを分析してみたい。日本は世界でも最も安全な国といわれているがどのような根拠があるのか。また、グローバル化によって日本の食品安全は脅かされるというのは果たしてそうなのか。制度的な面では日本は他の先進国に大きく後れを取っているのではないか。そうでもあるにもかかわらず、日本の食品安全は高度に確保されているように思えるが、これはどうしてかなどについて考えてみたい。この分析の中で食の安全における科学と社会文化の役割が見えてくることを期待したい。

② 『食品安全における「適切な保護の水準」の政策的意義』
  藤岡 典夫(農林水産政策研究所)

  <藤岡先生レジュメPDF/287KB
  <藤岡先生補足PDF/123KB

本来、食の安全には「どの程度のリスクを受け容れるか」という非科学的要素(価値判断)が入らざるを得ず、安全対策は「受け容れられるリスクの水準」=「適切な保護の水準」を達成するように決定されるべきものである。ところが、食の安全は専ら科学的に、かつゼロリスクになるように決定されるとの誤解が多く、しかも放射性物質の基準値の場合のように国がこのような誤解を正そうとしていないことは、さまざまな問題を生じさせる。「適切な保護の水準」は、合理的な食品安全政策とするためのキーワードであるが、わが国の食品安全法制上、明確な位置づけはない。WTO協定等における「適切な保護の水準」についての国際的ルールを確認し、食品以外のリスクに関する議論も参考にしつつ、食品安全政策・制度における「適切な保護の水準」概念の明確化の必要性とその意義を考える。

③ 『フードディフェンス上のリスクが なぜ極大化して伝えられるのか』
  広田 鉄磨(ネスレ日本)

  <広田先生レジュメPDF/913KB

2008年、中国天洋食品でのメタミドホス混入事件をうけ、過去7年ほどで日本では安全カメラと呼称される録画カメラが大量に食品工場に導入されたが、このような展開を見せているのは日本と中国に限定される。なぜ日本でこのような展開になったのか、その謎を紐どいてみたい。また合わせて、録画カメラには実際にフードディフェンス犯罪に対する抑止効果があるのかについても考察をおこなう。現在、FDA、WHO、PAS96などの参照文書があるが、すべてに一長一短があり、その単一に依存して日本のフードディフェンスを構築していくことは危険である。ひとつひとつの文書の長所短所を解きほぐしながら、今後日本が模索するであろうフードディフェンスのあるべき姿を参加者とともに考えてみたい。

  <第1回 アンケート集計結果(PDF/392KB)

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<第2回 2015年6月28日(日)>

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古川雅一先生


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鬼武一夫先生


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戸部依子先生


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パネル・ディスカッション


『消費者の購買行動に影響を与えるリスコミ』
    古川 雅一(東京大学)

人は日々様々な意思決定をしているが、その判断が必ずしも合理的とはいえない。その背景には、リスクといった物事の起こりやすさに対する認識、損得に対する認識などにおいて、人間の非合理性が存在するからである。本講演では、まず、人間の非合理性の特性を理解する。そして、購買行動や健康行動における非合理性、消費者のリスク回避的行動について考える。また、食品に対する安心感とも関連する添加物の有無、産地、賞味期限といった食品表示情報が消費者の購買行動にどのような影響を与えるのか、アンケート調査の結果の概要を報告する。


『国際的消費者視点のリスコミのあり方』
    鬼武 一夫(日本生活協同組合連合会)

近年、グローバル、地域および国内における食品媒介感染症の発生および大規模なる食品回収は、食糧供給と農業食品の生産と貿易の安全性に対する消費者の信頼に悪影響を及ぼしています。このようなイベント後の解析では、リスクコミュニケーションの原則と実践をより効果的に使用することの重要性を示しています。国が発展して、既存のリスクコミュニケーション計画や食品の安全性に適用される実践を評価し、自身または他国の経験から学ぶことが奨励されています。インターネットやソーシャルメディア技術の使用の増加に伴い、より大きい透明性およびより顕著な食品安全性リスクコミュニケーションへの公開の需要は、食品安全性およびより広範な公衆衛生セクターの効果的なリスクコミュニケーション戦略の重要性を確認して予期できます。今回、海外の事例を参考として、国際的なる消費者視点のリスクコミュニケーションのあり方について、皆さんと考えていきたいと思います。
鬼武先生のレジュメはこちらPDF/4.38MB


『消費者視点の食品企業のコミュニケーション』
    戸部 依子(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会)

企業と消費者のコミュニケーションについて、従来は、事業者の"迅速""正確""誠実"な対応が求められていました。現在では、対応を受ける側、つまり消費者の視点と対応の結果に着目した"満足""信頼"が求められています。さらに、SNSが普及した社会にあっては、製品やサービスのターゲットユーザーだけでなく、多くの関係者との即時的なコミュニケーションの実現に向けた"計画"の必要性、重要性が示唆されます。企業と消費者の相互の "想定外"を"想定内"にするための取組としても"計画"は重要です。世の中の変化よりもちょっと先を行くコミュニケーションを一緒に考えましょう。
戸部先生の講演レジュメはこちらPDF/1.58MB

  <第2回 アンケート集計結果(PDF/390KB)

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<第3回 2015年8月30日(日)>

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関澤純先生


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岸本充生先生


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小島正美先生


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「食の安全要因と人の要求(安心)要因を探る」 関澤 純 (NPO食品保健科学情報交流協議会)

基礎的な研究から生産・流通現場の衛生管理の徹底、家庭での衛生上の注意に至る関係者の努力と協力で食の安全は達成され、私達は安全で健康的な食生活を営むことが出来る。人は本能的に環境や食品に潜むリスクや、体と食品の相互作用で生ずる可能性のあるリスクに対し、危険を避け、望ましく思われるものを選び生存を図ってきた。しかし人を誤解させる話が多々あり、安全と安心には大きい乖離が見られる。この乖離を小さくするにはどうすれば良いだろう?事例を紹介しいくつかの提案をしたい。

関澤先生講演レジュメpdf/978KB


「基準値の根拠を通して考えるリスコミ」  岸本 充生 (東京大学公共政策大学院)

食の安全・安心を議論するうえで基準値や法規制の存在は欠かせない。ところが,事業者や行政から基準値や法規制の根拠がきちんと説明されることは少ないし,消費者も基準値や法規制を絶対的なものとみなし,その根拠にまで関心を持たないことが多い。基準値を超えない場合はゼロリスクであるかのような説明がなされ,消費者も一時的な安心を得る。しかし,食の安全に関わる様々な基準値の意味や導出方法,基準値に伴う不確実性,法規制の費用対効果などを,事業者,行政,消費者,マスメディアが共有しておくことが,長期的には社会のリスクリテラシーを高めることにつながるのではないだろうか。

岸本先生講演レジュメpdf/1.06MB


「食品のリスク報道はなぜ、ゆがむのか」 小島 正美 (毎日新聞社)

 そもそもニュースは、ある角度から切り取ったものです。その切り取り方は、記者、専門家、行政官、市民団体、政治家、事業者で異なります。情報を届ける狙いが異なるからです。専門家なら正確さを重視するでしょうが、記者は正確さよりも、おもしろさ、新規性を重視します。市民団体は自分たちの組織の存続に有利な情報を選び取ります。行政官も自分たちの利害に有利な情報を好む。こうした利害関係者が入り混ざった構図の中で情報をやりとりしてゆくうちにリスク情報がゆがむ法則を解き明かしたい。

小島先生講演レジュメpdf/614KB

  <第3回 アンケート集計結果(PDF/358KB)

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<第4回 2015年10月25日(日)>

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田野井慶太朗先生


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荒井祥先生


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佐々木幸枝先生


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パネルディスカッション


『食・農業環境の放射能汚染』  田野井慶太朗(東京大学大学院農学生命科学研究科)

2011年3月の東日本大震災から、早くも4年半が経過しました。この間、福島第一原子力発電所事故による農地の放射能汚染に対するリスクも大きく変化してきています。本講演では、事故当初から現在に至る過程において、放射性物質、特に放射性セシウムが我々の食を汚染する度合いについて数値を読み解きながら、放射能汚染のリスクについて考えたいと思います。
田野井先生講演レジュメ/PDF22.6MB

『食品添加物メーカーは何を語るべきなのか』 荒井 祥(上野製薬株式会社)

消費者は食品添加物に過敏なのだろうか。実際に被害の出ている「食中毒」や「いわゆる健康食品」よりも、食品添加物に不安を感じているという調査結果があるので、過敏といえるかもしれない。しかしその割には、買い物の時にあまり気にしていないし、調べることもしない、かと言ってよく理解しているわけでもないという調査結果もある。 消費者は、食品添加物について情報を得る機会が少なく、正確な認知ができていないために、なんとなく不安になっているのだと思う。このような人たちに食品添加物メーカーとして何を語るべきなのだろうか。あるリスコミでの講演事例を示すので、皆様のご意見をおうかがいしたい。
荒井先生講演レジュメ/4.76MB

『遺伝子組み換え作物のリスコミのあり方』 佐々木 幸枝(日本モンサント)

遺伝子組換え作物、食品に関するイメージを聞くといまだにネガティブなイメージを持たれることが多いが、実際にどのような技術かとたずねるとその技術について正確に理解している方はかなり少ない。しかし技術の有用性や安全性について科学的な説明をいかに尽くしても、それが安心感や受け入れに即つながるとは言えないと実感している。インターネットの普及に伴い、科学的事実とは別に、遺伝子組換え作物の危険性や問題点をあおるような都市伝説的な情報も氾濫する中で、情報の信頼性、納得感、共感できる価値をいかに創造していけるかが問われているように感じる。
佐々木先生講演レジュメ/1.96MB

  <第4回 アンケート集計結果(PDF/431KB)

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2016年も「食のリスクコミュニケーション・フォーラム」を開催予定ですので、ふるってご参加ください。

なお、SFSS正会員にご入会いただきましたら、参加費3,000円が無料となりますので、 ぜひ入会をご検討ください。

◎SFSS正会員、賛助会員の募集について ➡ 詳細はこちら

以上、よろしくお願いいたします。


(文責:山崎 毅)