食肉・加工肉の安全性について

Q(消費者): 食肉・加工肉の発がん性が海外で発表されたようですが、食べるのを控えるべきでしょうか?

A(SFSS):食肉(赤肉)・加工肉の過剰摂取で大腸がんのリスクがあると国際機関(IARC)から発表されましたが、日本の国立がんセンターの見解では日本人の通常の食事なら問題ないとしています。
お肉類を食べないことによる健康へのマイナス面を考慮すると、過剰摂取には留意しつつも、栄養バランスのとれた食事を心がけることが肝要でしょう。


【くわしい解説】

この度、環境中の発がん物質を科学的証拠の度合いにより判定/分類する国際がん研究組織(IARC)により、赤肉(Red Meat:牛肉・豚肉・羊肉などの食肉類)はGroup2a=「ヒトに対しておそらく発がん性がある」(ヒトで限定的証拠あり/実験動物で十分な証拠あり)に、また加工肉(Processed Meat:ハム、ベーコン、ソーセージほか)はGroup1=「ヒトに対して発がん性がある」(ヒトで十分な証拠あり)に分類したというプレスリリースを発表しました。

◎IARC Monographs evaluate consumption of red meat and processed meat(2015/10/26)
  http://www.iarc.fr/en/media-centre/pr/2015/pdfs/pr240_E.pdf

また、このIARCの発表を受けて日本の国立がんセンターが、本発表の解説ならびに、日本人のがんリスクが心配するレベルでないとの見解を発表しています:

【情報提供】赤肉・加工肉のがんリスクについて/国立がんセンター(2015/10/29)
  http://www.ncc.go.jp/jp/information/20151029.html

今回、IARCが赤肉/加工肉と大腸がんの相関を解析したメタアナリシスにおいて、加工肉の摂取が1日50g増えるごとに大腸がんが18%増えると結論していますが、彼らが抽出した9つの疫学研究論文を調査したところ、6つの論文では加工肉摂取と大腸がん発症に有意な相関はない(結果ネガティブ)としており、 残り3つの論文結果で加工肉の摂取と大腸がん発症に正の相関があったことを重視して、大腸がんの発がん因子として十分な科学的証拠があるとしたようです。

ただ、お肉を習慣的に過剰摂取すること、野菜嫌いであることなど、栄養の偏りがあるとがんリスクが高まることは、以前より知られており、今回初めてわかったことではありません。

また、われわれが毎日口にしている食品が天然物ならびにその加工物で、何千何万種類の化学物質の混合物である限り、その中には発がん物質も抗発がん物質も含まれます。
たとえば、おそらくたくさんの方々が楽しまれているアルコール飲料も、ヒトでの発がん性の証拠が十分にあるとして、IARCのGroup1に分類されています。

◎ウィキペディア 「IARC発がん性リスク一覧」
 https://ja.wikipedia.org/wiki/IARC発がん性リスク一覧

ただ、このIARCの発がん性分類はリスクの大きさによる分類ではなく、あくまで科学的証拠の強さによりグループ分けしているリストですので、同じ「Group 1」でもヒトへのがんリスクが同等というわけではありません。

その意味でも今回、「加工肉はタバコやアスベストと同等の発がん性」というような一部の報道は明らかに誤りであり、加工肉の摂取量(暴露量)によってもがんリスクの大小が変わってくるのは当然です。

今回の国立がんセンターからの見解のとおり、IARCが一部の疫学研究結果を重視してヒトでの発がん性の根拠ありとした判定については重く受け止めつつも、現在の日本人の通常の食事であれば、加工肉や食肉のがんリスクはそれほど高くないということですので、毎日加工肉ばかりを食べるというような偏った食事でなければ、心配する必要はないと考えてよいと思います。

それよりも、今回の発表を目にした消費者が、食肉や加工肉を避けることで、むしろ十分なタンパク質・ビタミン・ミネラルなどの摂取が不足し、とくに中高齢者でサルコペニア(骨格筋量・筋力低下症候群)、ロコモティブシンドローム、脳卒中などのリスクがあがるというような本末転倒が起こるのではないかと危惧します。



(文責:山崎 毅)

[2015年11月2日/作成]