くらしとバイオプラザ21

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■くらしとバイオプラザ21の歩み

 くらしとバイオプラザ21は2002年、バイオ産業人会議(https://www.jba.or.jp/jabex/)の提案で生まれた特定非営利活動法人です。設立当時、「サイエンスコミュニケーション」、「リスクコミュニケーション」ということばは、まだ市民権を得ていませんでした。  設立目的は、バイオテクノロジー、特に遺伝子組換え作物・食品への理解や、医薬品の開発やそれらの治験に対する理解を進めることでしたが、発足してみると市民の不安の理由や懸念は立場によって様々で、それぞれの対象に適した方法の試行錯誤の道のりでした。  私たちは、親子実験教室(親子対象に身近な素材を使って実施。夏休み前後には食物からのDNAを粗抽出する方法を紹介したWEBサイトのアクセスが毎年、急増します)や、食品化学新聞でのリスクコミュニケーション当事者によるリレー連載なども行っていますが、本稿では遺伝子組換え技術とゲノム編集を中心としたリスクコミュニケーション関連のふたつの活動についてご紹介します。

主な活動

○冊子「知っておきたいこと」:メディアの方に、食品添加物、農薬、遺伝子組換え作物・食品の役割、利用の実態、安全性審査について知って報道するときの参考にして頂くために「メディアの方に知っていただきこと~食品添加物、農薬、遺伝子組換え作物・食品」を作成しました。この内容は、メディア以外の方にも広く周知したほうがいいという意見から、「メディア・・・」を外したタイトルにし、WEB サイトで更新しています。対象とした3つの項目については、開発から安全性審査まで多くの費用と人手がかかっていることがよく理解されていないのは残念だと考えています。この状況が改善されればゲノム編集に代表されるような新技術への理解も変化すると期待しています。
○コンシューマーズカフェ:食をめぐるリスクについて一緒に考え(共考)、話し合うことで、様々な考え方が存在することを実感し、自分の考えをまとめられるように企画した専門家(消費者団体、メディア、行政、研究者)と非専門家の双方向性の高いイベントです。その背景には、消費者基本法にあるように積極的に情報収集する消費者像があり、時には消費者も意見表明をしていくような道を開きたいという思いがあります。

課題
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 現在、いろいろなリスクコミュニケーションを行われていますが、そこには信頼が必須であることは共有されているところです。信頼関係の構築には、科学的根拠を正確に伝えることに加えて、意図への期待(わかりやすく情報発信をする誠実さ、不安や懸念にも耳を傾ける真摯さなど)も求められます。表にあるように、双方向性が高い方が信頼関係は構築できそうです。しかし、対象人数が少なく効率的ではありません。共考の深さと人数のバランスを考えなければならないと思います。
 そこで、大人数に語り掛けることができるメディアと信頼関係を保つことこそがくらしとバイオにふさわしい役割だと考えています。昨年、ゲノム編集、遺伝子組換え、従来育種のメリット・デメリットの比較表を作り、記事作成の参考になればと厚生労働省と消費者庁の記者クラブに投げ込みました。すぐに新聞社から問い合わせがありました。科学的根拠に基づいた記事の作成に役立てるような資料を用意し、メディアとwin-winの情報交換をめざして、メディア懇談会を開いて本音の意見を集めています。
 多くのリスクコミュニケーション担当者が抱える大きな課題のひとつは、低関心層への働きかけです。ヴィクトリアセグメントという方法で、私たちのイベント参加者の科学への関心の程度を評価したところ、高関心層しかおりませんでした。その点、親子実験教室は、参加者に夏休みの宿題のために科学への関心が高くない保護者も参加しますし、高校や大学のテキストとして冊子が利用される場合には低関心層にアクセスできる可能性が広がります。いろいろな手法を適切に用い、サイエンスアートなどの異分野とも連携し、新しい手法を開発することが必要だと思っています。