株式会社森永生科学研究所

森永生科学研究所



■検査キット製造者の立場から見た食物アレルギー

〇おいしく、たのしく、すこやかに
 株式会社森永生科学研究所は、森永製菓株式会社の研究所に設立されました生化学研究室から始まり、その後森永製菓の100%子会社として独立しました。
 創業以来120年の歴史を持つ森永製菓グループは、新たな歴史を刻みつつ、未来に向けてさらなる進化を遂げていくための指針として、新しい企業理念を策定しました。この企業理念の中で、パーパスを『森永製菓グループは、世代を超えて愛されるすこやかな食を創造し続け、世界の人々の笑顔を未来につなぎます』とし、社会に対してどのように貢献していくのかを表明しています。
 そして、企業理念を一言で表した言葉が「コーポレートメッセージ」 "おいしく、たのしく、すこやかに"です。
 森永生科学研究所は、この "おいしく、たのしく、すこやかに" というコーポレートメッセージを大切にして、事業活動を行っています。私たちは独自の免疫測定技術を基に、食品中の特定原材料(食物アレルゲン)を検出、測定するキット、食品原料の安全性を確保するための加熱処理動物由来タンパク質検出キット等の食の安全・安心の基礎となる食品検査分野の商品を開発してきました。

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〇検査キットメーカーから見た食物アレルギー
 事業活動の柱の一つが、食品中に含まれる食物アレルゲンを検出するキットの研究、製造、販売です。アレルゲンは一般の人に対しては無害でありますが、食物アレルギー患者に対して危害となるという点で、食中毒菌など他の食品中の危害物質とは異なります。このためアレルギーによる危害を防止するためには、対象原料の含有の有無が判別できる正確な原材料表示が必須となります。
 食物アレルギーの表示制度は各国にありますが、日本のアレルギー表示制度は世界的に見ても優れており、いくつかの特徴があります。
  ・表示が必要となる濃度を数値で示している
  ・濃度を決定するための分析法を定めている
  ・標準物質を統一している
  ・対象となる原材料を明確にしている
  ・可能性表示(may contain)を禁止している
  ・行政機関が普遍的な判断を行うための判断基準が整備されている(判断樹)
等がその特徴です。
 このアレルゲンを分析する方法としていくつかの方法がありますが、定量法として免疫測定法であるELISA法が用いられています。表示制度が始まった当初は食品中から食物アレルゲンを抽出する能力が低く、加工によって変性してしまったアレルゲンタンパク質がうまく測定できないという問題点がありました。その後、変性したタンパク質も効率よく可溶化できる方法を開発し、同時に使用する抗体も改良して現在に至っています。その他に簡易法としてイムノクロマト法があり、製造現場でも簡単に短時間で検査できる方法として利用されています。
 ところで、加工食品の表示を作成するためには、使用原材料の正確な情報、原材料の配合割合、同じ製造場所で製造する他製品のアレルゲン情報などが必要になります。正しい原材料情報が入手できませんと、原材料表示が誤ってしまう可能性もあります。決定された原材料表示を確認するために、製品の検査を行うことは表示の正確性を担保するために有効な手段です。
 さらに製造工場においても、アレルゲンを混入させないためにアレルゲンを含む原料と含まない原料が適切に分別管理されていること、製造ラインで洗浄方法などの工程管理が正しく行われていること等が重要なポイントとなります。製造ラインの検査は、製造工場での管理方法が適切であることを検証するために有用です。
 食物アレルギーの問題を解決するために分析は一つの手段ですが、食物アレルギーをもつ子供の保育所や学校関係者の方、外食に携わる方など食に関係するすべての方が取り組むべき問題と言えます。
 これからも森永生科学研究所は、食物アレルギーだけでなく食の安全にかかわる問題を解決するために貢献していきたいと考えております。