NPO法人持続可能な社会をつくる元気ネット

NPO法人持続可能な社会をつくる元気ネット 事務局長
鬼沢良子

■これからも連携協働による課題解決を目指して

 当NPOは、最終処分場のひっ迫が社会課題になっていた頃の1996年に発足。以来、一貫して廃棄物をテーマに持続可能な地域づくりを目指して活動を続けている。2013~2014年に各種リサイクル法の見直しがあり、元気ネットはEU視察やマルチステークホルダー会議を開催してあるべき姿を熟議し、NPOとして政策提案してきた。

 最近は、海ごみのマイクロプラスチックや食品ロスがクローズアップされている。2015年9月に採択された国際目標「SDGs(持続可能な開発目標)」の「目標12 つくる責任つかう責任」では、全世界の一人あたり食料の廃棄を半減させ、生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させると明示している。

乃が美

 食べられるのに捨てられている日本の食品ロスは621万トン(平成26年度推計)もあり、その内家庭系は282万トンにのぼる。期限表示の理解不足の他、買い過ぎや食べ残しも多い。家庭における食品ロスの内訳の27%が食べ残し、直接廃棄が18%もある。(農林水産省26年度調査)一人一人が食品ロス削減のためにできる事は多い。買い物、料理、食事とそれぞれの場面で意識して少しずつ気をつけ、今日から実践することが重要である。外食や宴会等の場面では、松本市が早くから呼びかけている3010(さんまるいちまる)運動がある。宴会の時、最初の30分は料理を楽しみ、最後の10分は席に戻り残っている料理をいただく。これは日本古来の米粒ひとつ残さないという「もったいない」文化であり、幹事さんの声掛けひとつでできる。さらに、外食の際に「ライスは半分で」の一言で食べ残しが少なくなる。今では各自治体の呼びかけで、小盛メニューの提供など「食べきり協力店」登録も増えているが、残念ながら消費者の認知度が低い。

 また、福井県が事務局の2016年に発足した自治体間の情報共有のための「全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会」には、312自治体が参加している。(12/20現在)

乃が美

 当NPOが地域を応援する目的で、2001年から12年間実施した「市民が創る環境のまち"元気大賞"」の2005年度特別賞を受賞した鳥羽駅前の国際観光ホテル戸田家は、20年以上前から食品廃棄物の削減やリサイクルループづくりを始め、伊勢志摩食品リサイクル研究会を発足させた。一般的にバイキング形式は、多めの品数を提供、食べ残し等食品ロスが発生してしまいがちだが、戸田家の場合は、お客様の目の前で料理する方式をとり料理の人気の有無からお客様の反応まで調理人がすぐに確認できる他、各現場で削減に向けての確認や作業を徹底したことで、早くから食品ロスを大幅に削減してきた。それは、もちろん経費削減にもつながっている。

 2020年の東京五輪大会では、海外から多くの観光客が来日する。その時、「日本ではどこへ行っても食品ロスの削減に当たり前のように取り組んでいる」と言われる社会にしたいと願っている。そのためには、2020年に向けてのムーブメントづくりと宿泊施設や飲食店の取組が重要と考え、戸田家の取組を参考にした現場で使える簡単ガイドブックを作成し、来年開催される福井国体の宿泊施設や飲食店で試していただきたいと計画している。そこから見えてきたことをガイドブックの改定に活かし、首都圏や2020年の事前キャンプ地で試してみる等全国各地での取り組みにしていきたいと考えている。

 一方、社会のムーブメントづくりには、国全体で意識を高め行動の変容が求められる。それには、マスコミの力も大きいが、最も重要なのは実践につながる情報伝達と伝える人を増やすことである。これまで数多くの普及啓発事業をしてきた中で、2011年から実施している「楽しく学べる容器包装の3R」は、関心の薄い人向きの参加型出前講座である。その一つ、リサイクルした後何に生まれ変わるかというビンゴゲーム形式の講座は、参加者の反応も良く年に5~6回、合計2000人以上に実施している。元気ネットでは、そもそも地域への情報伝達は、その地域の方々に担っていただきたいという思いから、3R市民リーダー育成講座を開催、地域で伝えられる人材を育成してきた。インターネットにより情報はあふれているが、一方通行のため受け手の理解が間違っている場合も見られる。最新の情報を正しく理解し、地域で伝えられる人材が求められている。

 環境に配慮した2012年のロンドン五輪大会は、準備、運営、大会後において、数々のレガシーを残したが食品ロス削減まではできなかった。2020年東京大会のレガシーとなるために、日本全体で食品ロス削減を定着させるための活動を続けていきたい。