旭松食品株式会社

■いつも使っていただきたい「こうや豆腐」だからこそ

信州・飯田の地で「こうや豆腐」(「凍り豆腐」や「しみ豆腐」のようにも呼ばれます)を作り始めたのが昭和26年5月。それから今日までこうや豆腐を製造してきました。
当時、こうや豆腐は冬期の寒暖の差を利用して豆腐を凍結・乾燥させる製法で、農閑期の副業として作られていましたが、工業化に取り組み、冷凍や乾燥設備にて年間を通して製造されるようになりました。


旭松食品株式会社

こうや豆腐は大豆タンパク質の冷凍による変性により多孔質構造を作り、特有の食感が作られます。しかしながら、その食感は時に「スポンジみたい」と言われるなど、好まれない事も度々でした。そこで先人たちは「ソフト化」に取り組み、アンモニアによる膨軟加工を開発しました。ただし、その特有の臭い等により、使用する前にぬるま湯などで戻し、除く必要がありました(この戻しやもみだししないといけないイメージは今日でも深く残っています)。
この状態を改善すべく、昭和47年に重曹を使用した膨軟加工を開発しました。これにより、戻しやもみだしの必要が無く、そのまま鍋などで煮炊きできる簡便性を確立し、今日まで至っています。
こうや豆腐はタンパク質がおよそ半分、残りを良質な植物性脂質などで構成され、ほとんど炭水化物を含まない食材で、健康によい伝統的な食材として広く認識いただけています。ただし、栄養成分としては大豆に多く含まれるカリウムがほとんど無くなっています。凍結した豆腐を解凍し、乾燥する工程上で流出してしまうためです。合わせて、重曹で膨軟加工する事でナトリウムが多く含まれる大豆製品となっています。健康的な食材として認識いただけている「こうや豆腐」をより良くするため、今年の4月より膨軟加工に使用する重曹を炭酸カリウムへ変更し、大幅にナトリウムを減らしてカリウムを増やす新製法に全面移行して、これらの問題点を改善してきています。
「和食」がユネスコ無形文化遺産登録され、世界的にも話題となる中ですが、日本における塩分摂取量は厚生労働省の推奨するレベルまではなかなか減っていないのが現状です。また、塩分の排出作用があるとされるカリウムについては摂取を推奨するようになってきています。このような中で、上述の新製法とあわせて"だし"も減塩に配慮した商品(減塩小さなこうや)は高血圧学会にて減塩食品として認めていただきました。
最近では、凍結によるタンパク質変性で形成されるレジスタントタンパクがLDL-コレステロールの上昇を抑える、といった報告も出てきています。毎日でも食べていただきたい「こうや豆腐」をより良い物とするため、努力してまいります。


【文責:佐々木 裕(旭松食品(株)商品設計課課長)】