リスク情報に対する消費者の過剰反応

立教大学ビジネスデザイン研究科特任准教授 古川雅一

リスク情報に対する消費者の過剰反応には、以下のような人間のリスク認知の特性が影響していることも多い。
まず一つめの特性として、人間は個々の事象の起こる確率を額面通りには受け取らず、実際の確率に対して独自の「重み」を加えるというものである。非常に低い確率でしか起こらない事象については過大に評価し、リスクを大きく捉える傾向がある。しかも、確率ゼロと極微小との間には捉え方の大きな差が存在する。二つめの特性として、人間は具体的な事象を過大評価する。リスク情報に関しても、統計データよりも生々しい事例のほうを強く認知する。ゆえに、食品の安全性に対する国民の信頼を脅かすような事件が起こった場合、リスクを過大評価してしまう。三つめの特性として、ヒューリスティックバイアスである。人間が不確実な物事の判断を下す際や何らかの問題を解決しようとする際、明確な手掛かりがない場合も珍しくない。そのような際には、たとえばある物事の起こる確率をその例の思いつきやすさによって推測してしまう。ヒューリスティックとはこのような簡便的あるいは発見的な探索方法を指し、その際に誤った結論を導き出してしまうことをヒューリスティックバイアスという。リスク認知に関してもこのようなバイアスが強く影響する。

プロスペクト理論における確率加重.gif

[図]プロスペクト理論における確率加重
確率が低い事象に対しては大きな重みが加えられ、確率が中等度から高い事象に対しては重みが小さい。
(Tversky, A., and Kahneman, D., The framing of decisions and the psychology of choice. Science, 211, 453-458, 1981.)