加工食品の安全と安心について

阿紀 雅敏 元カルビー株式会社上級常務執行役員/現在 烟台カルビー商貿有限公司 董事長
NPO法人食の安全と安心を科学する会(SFSS) 新任理事
阿紀 雅敏

私はカルビー株式会社で長年研究開発や品質保証の仕事を行ってきましたので、その観点から加工食品の安全について述べます。
カルビーの「かっぱえびせん」の原料えびは新鮮な生えびを冷凍した状態で工場に入り、ポテトチップのじゃがいもは畑から土がついた状態でポテトチップ工場に入ります。これら原料を丸ごと使うことによって独特のおいしさと栄養素が確保されますが、精製された原料や香料を使った商品に比べて、原料由来の異物混入リスクが格段に増大します。更にじゃがいもの貯蔵中にじゃがいもの芽が出ますが、機械や人手で除去しきれずフライされた場合、芽がフライされると毛髪のように見えてお客様からお叱りを受けます。じゃがいもの種芋、栽培(適切な施肥と農薬散布)、収穫、貯蔵、加工に至るサプライチェーン全体として問題(例えば芽)の解決に取り組み、品質とコストを最適化しトレイサビリティを確保しています。更に進めてポテトチップの袋毎にお客様がトレイサビリティを確認できるようにすることでお客様から信頼を得ることに役立っています。
お客様への危害は物理的危害、化学的危害、生物的危害がありますが、原料由来の異物の他に工場で発生する異物があります。生産設備や建物に由来する金属、ガラス、プラスティックなどですが、お客様の口にはいれば重大事故につながります。金属探知機で検出できないガラスやプラスティックを極力減らすとともに、万一破損しても製品に混入しないライン設計と定期的設備メンテナンスによる予防保全活動を行わなければなりません。更に工場から流出防止のために金属検出器、X線検査装置、カメラなどがあります。
最近意図的異物混入の事件があり生産ラインへのカメラの設置が行われてきました。これは決して従業員を監視するためではなく、異常の発見や万一何かあった場合のトレイサビリティを取るという観点で推進すべきでしょう。
化学的危害はアレルゲンコンタミや工場で使用される洗剤、殺虫剤などの化学薬品の混入です。特にアレルゲンはアナフィラキシーショックにより最悪の場合は死に至ることもありますから大変重要です。基本は識別管理ですが交差汚染が起こらない生産ライン設計を行うことと日常的には清掃手順とモニタリングを確立しておかなければなりません。もちろん製品設計段階でアレルゲンを減らす努力をしなければなりません。
生物的危害では微生物汚染で微生物をつけない、増殖させない、殺菌するなどの対策が打たれています。従業員の手などの衛生管理、増殖させないための清掃などの日常活動の他に年間の清掃カレンダーを作成し工場全体で取り組みも必要です。年間の設備メンテナンス活動とあわせて実施するのが良いです。
安全は科学ですが安心の概念はよくわかりません。安心=安全+信頼と言われています。
製品のトレイサビリティを公開してお客様の信頼を得る活動でお客様との信頼を築く。原料産地で原料生産者と一緒に改善活動を行う。更に万が一にも回収事故があった場合の適切な対応でお客様(流通および消費者)との信頼関係を保つなど「釈迦に説法」のような話で恐縮ですが、信頼を得るためには全社的な日常活動が重要です。