人間のリスク回避性向は、局面によって変化する

東京大学特任准教授
古川雅一
古川雅一

次の問題を考えてみてください。

[問題①]あなたは、あるショッピングモールで行われているイベントに参加することになりました。そのイベントとは、まず賞金1万円が与えられ、次に箱A、箱Bのどちらか一方からクジを引く、というものです。箱A、箱Bの中に入っているクジの確率については図の箱に記載のとおりの違いがあり、また、クジは必ず1回引かなければなりません。さて、あなたは、どちらの箱からクジを引きますか?

[問題②]翌日、あなたは、別のショッピングモールで行われているイベントに参加することになりました。そのイベントとは、まず賞金3万円が与えられ、次に箱C、箱Dのどちらか一方からクジを引く、というものです。箱C、箱Dの中に入っているクジの確率については図の箱に記載のとおりの違いがあり、また、クジは必ず1回引かなければなりません。さて、あなたは、どちらの箱からクジを引きますか?

これらの問題は、人のリスクに対する回避性向を調べるために行われる調査実験の一例です。 まず、それぞれの箱からクジを引いた場合の期待値を確認しておきましょう。箱Aについては、2万円×0.25、すなわち5000円を最初に与えられた賞金1万円に加え、15000円となります。箱B、箱C、箱Dについても同じく期待値は15000円となり、すべての箱の期待値が同じになります。しかしながら、大規模調査の結果から、大多数の人が問題①では箱Bを、問題②では箱Cを選ぶということがわかっています。これは、人のリスクに対する回避性向が局面によって異なることを示しています。人は、問題①のような利得局面ではリスク回避性向が強く、箱Aを避けて箱Bを選ぶ傾向にあります。一方、問題②のような損失局面ではリスク回避性向が弱くリスク愛好的であり、箱Dよりも箱Cを選ぶ傾向にあります。
このような、リスクに対する態度が直面した状況によって逆転すること(鏡映効果)は、複数の商品の中から1つ選ぶときに受けた説明やそれに対する認識によって、選択行動が大きく変化することを示しています。食の安全性に関しても、その情報の伝え方や状況によって、人の意思決定が大きく変化すると考えられるのです。