(書評)『植物バイオテクノロジーでめざすSDGs』小泉 望・加藤 晃 <編>
ヒトと地球の健康に植物バイオテクがどう貢献するのか

国際社会が2030年に向けて掲げた持続可能な開発目標:17色のカラーアイコンで表現されたSDGsのうち、何番に世界規模で寄与し、地球環境だけでなく人類のウェルビーイングにも役立つ技術があるなら、こんなワクワク感はない。植物バイオ技術には、世界中に広がるそんなポテンシャルを感じる。

本書は、植物組織培養・遺伝子組換え・ゲノム編集・代替肉など新たな植物育種技術の現在・過去・未来だけでなく、食と医薬に関わるバイオ技術がどのSDGsに貢献するのかイメージできる内容となっている。

今日のランチはフレンチの「SDGsコース2030」:GABA高含量トマトとソラニン・チャコニンを含まないポテトのサラダ、オレイン酸高含量の大豆油であげた魚フライ(以上、SDGs③)、大豆ミートのステーキ(SDGs⑬)、穂発芽しない小麦で焼いたパン(SDGs②)・・のようなメニューが国の補助金で1食500円・・なんて時代も、すぐそこに来ている気がする。

リチャード・ロバーツ博士が2019年に、"150 Nobel Laureates support GMOs" (ノーベル賞学者150人が遺伝子組換え作物を支持している)というタイトルで講演されたのを思い出した。日本ももっと持続可能な社会をめざして、植物バイオテクノロジーを推進すべきと実感させる一冊だ。

評・山崎 毅(SFSS理事長/獣医学博士)

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『植物バイオテクノロジーでめざすSDGs -変わる私たちの食と薬』
小泉 望・加藤 晃 <編> 化学同人 1760円
 https://www.kagakudojin.co.jp/book/b612732.html

<編者情報>
小泉 望 (こいずみ・のぞむ)
 大阪公立大学大学院農学研究科応用生物科学専攻 教授
加藤 晃 (かとう・こう)
 奈良先端科学技術大学院大学 デジタルグリーンイノベーションセンター 教授