食のリスクコミュニケーション・フォーラム2016 (4回シリーズ) 第2回 開催速報

【テーマ】『消費者の食の安心につながるリスコミを議論する』
【開催日程】2016年6月26日(日)13:00~17:50
【開催場所】東京大学農学部フードサイエンス棟 中島董一郎記念ホール
【主催】 NPO法人食の安全と安心を科学する会(SFSS)
【共催】 一般財団法人社会文化研究センター
【後援】 消費者庁、東京大学大学院農学生命科学研究科食の安全研究センター
【参加費】 3,000円/回
     *後援団体関係者、SFSS会員、メディア関係者は参加費無料

3人の先生方より、食のリスクコミュニケーションのあり方について、わかりやすくご講演いただいた後、パネルディスカッションでは会場の参加者からのご質問に対して演者の先生方からご回答いただき、活発な議論が展開されました。

【プログラム】

13:00~14:00 『これからの食の安全・安心と危機管理
          -グローバル化の激化とリスクコミュニケイシオン-』
          松延 洋平(首都大学東京 )
14:00~15:00 『放射線の経験から考える食のリスクコミュニケーション』
          小野 聡(立命館大学政策科学部)
15:00~15:20 休憩
15:20~16:20 『危機管理と知る権利についてー食品リスクと放射線リスクの違いと共通点』
         関澤 純(NPO食品保健科学情報交流協議会)
16:20~17:50 パネルディスカッション
        『消費者の食の安心につながるリスコミを議論する』
          進行:山崎 毅(SFSS)、パネラー:各講師
18:00~19:30 懇親会


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松延洋平先生


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小野聡先生


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関澤純先生


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*講演要旨ならびに講演レジュメは以下のとおりです:

① 松延 洋平(首都大学東京)
『これからの食の安全・安心と危機管理 -グローバル化の激化とリスクコミュニケイシオン-』

食のグローバル化は 食品・農産物の国際貿易の量・質両面の変革と一体化して進んできている。現時点で、最も注目すべきは食の安全・安心そしてその危機管理の制度・システムの世界的な大変革が進行し始めていることである。主導するのは 、「食安全向上法」の実施を図る米国であり、「GLOBAL GAP」の普及を急ぐEUであり、台頭する中国である。わが国はこのわずか数年の間にその遅れを克服して行かねばならなくなっている。この緊急課題に立ち向かうためにはわが国の産官学はもとより消費者・市民も巻き込んで総力を挙げて取り組む必要がある。
経済社会の国際流動化に対し国境や組織の縦割り境界・壁を克服し、並んで加速化著しい科学技術の革新の大波を乗り切るために、今や自然諸科学のみならず社会人文科学の融合体制の構築が急務である。

 <松延先生講演レジュメ/PDF157KB

② 小野 聡(立命館大学政策科学部)
『放射線の経験から考える食のリスクコミュニケーション』

2011年3月の原子力災害以降、我が国では政府や様々な専門家集団などによるリスクコミュニケーションが行われてきた。これらにおいては、専門家の情報提供と市民からの質問および意見の交流に基づく、従来から行われているリスクコミュニケーションのみならず、専門家と市民が協働で調査を実施し共に分析することによってリスクの現状を理解する「市民の科学」(Citizen Science)型のリスクコミュニケーションなどが見られている。本講演では、市民、行政、専門家らの対話や、放射線リスクに関する車座会議の運営の経験から、リスクコミュニケーションに根ざしたコミュニティのあり方について考察をし、食の安全におけるコンテクストに対する示唆を模索する。

 <小野先生講演レジュメ/PDF2.2MB

③ 関澤 純(NPO食品保健科学情報交流協議会)
『危機管理と知る権利についてー食品リスクと放射線リスクの違いと共通点』

リスクは定量的に表されるが単なる数字で表されない要素がある。健康影響では、何がどのようなばく露(摂取)経路で体内に取り込まれ(または取り込まれず)、体内で変化し、影響が危惧される標的(器官や分子)と反応し、ある期間、作用することで特定の変化から生じた病変が、人の年齢、健康状態や生活条件で異なる抵抗力により回復しない場合に問題が起きる。これらの過程を十分考察せず、基準値の大小やリスクモデルの議論をしても意味はない。私たちは、健康リスクの基本を知り、考えることでより充実した豊かな生活を過ごすことができる。リスクの特性と背景リスクの存在を考慮して食品と放射線を例に、危機管理のあり方を考えたい。

 <関澤先生講演レジュメ/PDF938KB


 <講演アンケート結果/PDF427KB

(文責:山崎 毅、写真撮影:miruhana)