すべての牛肉が安全なのに、消費者の不安をあおるのは?

[2011年8月3日水曜日]

内閣府食品安全委員会は、放射性物質の食品健康影響評価について、7月26日の第9回「放射性物質の食品健康影響評価に関するワーキンググループ」において、評価書案をとりまとめました。

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現在(7月29日~8月27日)、国民の皆様からの御意見・情報の募集(パブリックコメント)を行っており、今後、このパブリックコメントを検討したうえで食品安全委員会において評価書案を確定し、厚生労働省へ評価結果を通知する予定です。

食品安全委員会が今回くだした評価の結論は、山崎が6月26日のシンポジウムで述べたものとほぼ同様の内容でした

すなわち、100ミリシーベルト以下の放射線量では人体への健康影響が起こるという証拠はない、ということです。

食品安全委員会ワーキンググループの評価書案は200ページ以上にわたる膨大な報告書ですが、小泉委員長のメッセージは比較的簡潔に今回の評価結果をまとめてありますので、正確な表現を参照したい方はご確認ください。 ⇒小泉委員長のメッセージ

ワーキンググループは大学の先生方(研究者)の集まりですので、特徴としてはっきりしたデータがない場合に、「その可能性が否定できない」というようなあいまいな表現をされる場合が多いのが問題です。これが消費者の不安をあおってしまいます。

特に今回の評価書の中でも慎重なコメントが多すぎるため、「安全なのか危険なのかどっちなんだ?」という表現が散見されますが、これは忌々しきことです。

たとえば、「小児に関しては、甲状腺がんや白血病といった点でより影響を受けやすい可能性がある」との表現がありますが、結局100ミリシーベルト以下の放射線量が危ないとは述べていません。 それもそのはず・・ そのようなエビデンスはないからです。

生涯100ミリシーベルトの放射線量というのは、どのくらいの量でしょうか?


現在、厚生労働省が暫定規制値として設定している500ベクレル/kgの放射性セシウムが検出された牛肉100g(0.0007ミリシーベルト)を24年間毎日食べ続けた量に相当するそうです。

それは何を意味するかというと、国が定めている規制値(500ベクレル/kg)があまりにも低すぎるということです。 安全なはずの牛肉まで放射線量が多いという判定で出荷停止にしてしまうから、食の安心が脅かされているのです。

牛肉に関して食の不安をあおっている主な原因は以下の4つでしょう:

・低すぎる暫定規制値(早く上方修正を! 行政官庁は「保身」を捨ててサイエンスで判断すべし)
・「出荷停止」(安全なはずの食品を出荷停止するのは明らかに人災。即刻解除すべし。)
・「全頭検査」(行政レベルも小売店レベルも同様;「自分だけ安全」は抜け駆け行為。「すべての牛肉が実は安全」をつらぬくことが全体最適で風評被害を防止する)
・これらを大袈裟に報道するマスメディア(特に不安がっている消費者にインタビューする報道はやらせメールとレベルが同じ。実際はすべての牛肉が科学的に安全なのだから安心すべしと伝えるべき)

風評被害は牛肉だけにとどまりません。
このままだと間違いなく、次は「コメ」に飛び火します。

早く上記の原因4つを治療しなければ、
フード・インフォマフィラキシー(食品情報過敏症)の患者さんはもっと世の中に増え続けるでしょう。

K